曇りのち雨
空き地のまま放置され、何も手をつけられていない土地に雑草が生い茂っていた。雑草の上を大量のトンボが飛んでいた。よく見る茶色のトンボだった。最近トンボの数が増えた。実家は高台の上にある。今はほとんどの土地が住宅で埋め尽くされている。子供の頃は空き地ばかりだった。空き地は土地ごとに段になりながら連なっていて、その段差を飛び越えながら遊んでいた。空き地以外何もない場所だった。高台から見える景色は好きだった。西側には田んぼだけが広がり、遠く向こうには泉ヶ丘スキー場が見える。夜になるとスキー場を照らすライトが豆電球ほどに小さく見えた。たまに打ち上げ花火も見えた。それが何処のお祭りの打ち上げ花火なのかはいまも知らない。高台は風を遮るものがなく、いつも風が強かった。幼いころ高台の端まで行き、斜面に単管パイプで建てられた地名の書いてある看板に上り、意味もなく強風にあたっていたのを思い出す。一日曇り空で夕方からぽつぽつと小雨が降り始め、夜には本格的な雨になっていた。